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PROJECT STORY

電動ドライバ
「ブラシレスデルボSシリーズ(速度可変タイプ)」

新しい業界への挑戦

ねじ締めには様々な不良、すなわち、ねじバカ、ねじ浮き、ねじカジリ、ねじ頭破損など、トラブルがつきまといます。ねじ1本のミスが製品の品質に大きな影響を与えます。それに加え、作業効率の向上や作業管理も求められます。不良低減を求めるユーザーは低速の電動ドライバを、効率を求めるユーザーは高速の電動ドライバを使用します。作業管理には、ねじ締めカウンタを使用します。ブラシレスデルボSシリーズはトレードオフの関係にある「低速の品質」と「高速の効率」の両面を向上し、作業管理機能も搭載した業界初の電動ドライバです。
ねじ締め不良の多くは、ねじ締めの始めと終わりに発生します。そこで「締め始めは低速」「ねじ送りは高速」「締め終わりは低速」と回転速度を自動的に3回切り替えることによって、品質と効率の両面を向上させます。回転速度は任意に9段階選択でき、幅広いねじ締め条件に対応できます。加えて、ねじ締めカウンタの作業管理機能、仮締め機能、セキュリティ機能など多彩な機能が搭載されています。また、リモートコントローラによって同時に複数の電動ドライバの設定を変更することが可能で、設定効率向上と設定ミス防止に役立ちます。

苦労したコンセプト

開発を開始した当初は根本的なコンセプトが定まらず、コストばかりに目を奪われ、進捗がない状況に陥ってしまいました。「まず原点に立ち返り、将来を考えてみよう。」と上司から助言があり、「ねじ締めとは?」という根本的な部分から検討を開始しました。どうすればユーザーの期待を超える製品が作れるのか。10年、20年先の構想を考え、現実的な機能から夢のような機能まで開発部内でさまざまな議論を重ねました。そこで議論された機能に技術的難易度ランキングをつけ、それを組み合せていきました。そして、「自動速度可変+ねじ締めカウンタ+赤外線(リモートコントロール)」という基本コンセプトが出来上がりました。

膨大なプログラムと
耐久性で不具合

当然のことながら多機能化によって膨大なプログラム設計が発生します。一つ一つ打合せをしてトライ&エラーを繰り返し、自社プログラム作成を進めていきました。途中で大幅な変更があったり、細かい部分の解釈が異なっていたりと非常に苦慮しました。
耐久試験は、モータとギヤ部品を接続しているファンの破損が改善せず行き詰まりました。部品同士を固定したり、材料を変更したり、加工方法を見直したりと、様々な方法を試みましたが効果がありませんでした。一つ一つの部品の動きを確認していくうちに、強制的に回転軸を合わせると破損することがわかりました。そこでファンに接続するギヤ部品にボールを1個追加し、ファンが自然に最適な位置になる調芯構造をとりました。するとファンは破損しなくなりました。後になって考えてみれば簡単なことですが、この時は不安から解放されて安堵感でいっぱいになりました。

ユーザーの反応

試作品を携えて関西地方・中部地方を中心にユーザーリサーチを行ないました。試作品を見たユーザーは皆驚いた表情で「今までにない電動ドライバだ」「作業効率が上がる」「ここまで機能がパッケージ化されている電動ドライバは見たことない」「現場が革新的に変わる可能性がある」「コンセプトが面白い」など笑顔で話をしてくれました。この時、ユーザーの期待を超える電動ドライバが作れたのではないかと実感し、こちらが感動してしまいました。

最後に
製品開発にあたり、「やりたいことを好きにやってみなさい」と上司からの後押しがあり、苦しい時も乗り越えることができました。多方面で製品化に協力いただいた開発部門の皆さん、ユーザーリサーチに協力いただいた営業部門の皆さん、カタログ・動画・リモコンのデザイン制作に尽力いただいたデザイン部門の皆さん、多くの方のご協力があり、新製品を発売することができたと大変感謝しております。
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